引越しである。私たちが二カ月間生活したアパートを引き払う。こういう時はCさんが頼りになるので助っ人に来てもらう。
私たちの苦闘の思い出を一つ一つ消すように、壁の汚れを丁寧に拭いた――などと感傷に浸っている暇はない。掃除、ゴミ出し、荷造り、やるべきことはうんざりするほど多い。Cさん、相棒、私はただ黙々と作業を続ける。
掃除は入念に行った。前回、ここを出た時は、随分と私たちの生活の跡を残してしまったので(詳しくは「壁の釘」)。今回は出来るだけ痕跡を消そう、私たちがここで喜んだり、苦しんだり、悩んだり、笑ったりしたことが、すべて夢の跡となるように。
車にぎゅうぎゅう詰めに荷を積む込み、大家さんにあいさつすると、とっととアパートを後にした。風のように、振り向きもせず。遊牧民のような気分である。
というわけで、この物語も無事最終章を迎えることが出来ました。皆様、長らくのご愛読、ありがとうございました。時間差日記という間抜けな体裁だったにもかかわらず(ちなみにこの文章がネット上にアップされたのは12月11日の午前2時ですが、原稿を書いたのは12月10日午後8時、場所は新千歳空港のバーですので。言い訳です)。
しかし、物語はまだ続きます。私たちはこの26分の小さな映画に関して、小さな野望を抱いております。その内容については、次の物語で書きつがれることになるでしょう(きっと)。それまでは、しばし冬眠。命あらばまた他日。では、失敬。