撮って、食って、飲んで――さも面白おかしく、浮世離れした日々を送っているように書いているが、実際はしんどいことも多い。そんな中、毎日の楽しみと言えば「消し香盤」を塗りつぶすことである。
「消し香盤」といっても、多くの人にはピンと来ないであろうが、全シーンの番号がふられ、一覧出来る表のようなものである。今回の私たちの映画の場合、全部で36シーンなので、ドイちゃんが6×6の碁盤目状の表を作ってふすまに張り出してくれた。「これがないと、撮影した気がせえへんやろ」。毎日、撮影が終わると、その日に撮り終えたシーンのナンバーを赤いマジックで塗りつぶす。
前日はその「消し香盤」を塗れなかった。本日は延期されたシーンの撮影である。
カズオを使ったなかなか難しいシーンである。「アパートの通路を颯爽と通り過ぎる猫」。今回の撮影で初めて、スタッフ間で軽い意見の対立があった。「そんなことをして、猫が逃げ出したりはしないか?」。積極策でなんとか乗り越える。そのシーンについては、完成した作品を観てのお楽しみということで。
そして恒例の儀式、3人で「消し香盤」の前へ。36コマ目、ラストシーンが真っ赤に塗りつぶされた。
そのまま「スナック さくせす」へ。私たちの陣取るカウンターの一角だけが、カラオケボックスと化してしまう――やっぱり撮って、食って、飲んで、歌ってだ。