いつになったら着くことやら。札幌発滝川行高速バスの最終便。岩見沢~滝川間が吹雪のために通行止めだ。「上りは2時間遅れでした」と運転手さんはぐったり。急いで弁当を買い込みバスに乗り込むと、定時の21時5分に出発した。
「録れる音は札幌で録ってくるから」。数日前、そう言って相棒は滝川を発った。いつになったら止むことやら、雪が降り続く滝川だが、札幌ではまだ積もってもいないというのだ。その時は「ほんまかいな」という感じで聞いていたのだが、昼間バスで札幌に向かう時にその通りであることが分った。岩見沢ではかなり吹雪いていたのに、少しうとうとして、栗沢を過ぎた辺りであろうか、風景から積雪が消えていたのである。何とも不思議な感じがした。
相棒と札幌市内で合流して、今回音楽を担当してもらうKさんのもとへ。最終的な打ち合わせである。こちらのつたない説明に対してその場でギターを弾き、曖昧なイメージを的確に音に定着していただく。中身の濃い話し合いが出来た。
でもって、用事が済んだらとっとと帰ればいいものを、蠍座でベルイマンの「仮面 ペルソナ」を観たばかりに、最終便の時間になってしまったのである。帰ったらそのまま寝よう、今夜の編集はお休みだ、別に何時間かかったっていいじゃないか、iPodに入っている曲が全部終わるまでに着いてさえくれれば――と覚悟を決めたのである。弁当を食べ終えてお腹が一杯になると、いい具合にうとうとして来た。そう言えば、以前にも似たような状況があった――。
3年前の撮影の時のことだ。札幌からの帰路は、やはり必ずこの最終便であった。そんな時間まで何をしていたのか?何をしていたというわけではない。ただぼんやりと喫茶店で物思いに耽っていた。今回よりもはるかに困難な戦いだった。あらゆる意味で。現実逃避である。ある夜のこと、やはり岩見沢~滝川間が通行止めになった。吹雪の国道12号を超低速でバスは走り続けるが、いつまで経っても着かない。滝川到着は、確かツタヤが閉まりかけていたから、1時近かったのではないか・・・・・・。
まどろみから覚めると、バスはいつの間にか高速道を下りていた。窓の外を見ると雪の積もり方が全然違う。見覚えのある国道12号の風景、そろそろ奈井江辺りだろうか?今頃滝川はどうなっているのだろう?昨日見た光景をふっと思い出す。滝川市役所最上階の食堂、遅い昼食をとりながら街並を見下ろしていると、火山灰のように降り続ける雪に、このまま全てがすっぽり埋もれてしまうのではないだろうか、ポンペイの街のように永遠に――そんな思いに捕らわれた。もう一眠り出来そうだ。iPodからはヴァン・モリソンの歌声が聴こえてくる。至福である。